皆さんは“フッ素”と言う言葉をご存じだと思いますが、実際に歯科においては切っても切り離せないものです。

フッ素の役割は、“歯の再石灰化”や“虫歯予防”にとても深く関わってきます。フッ素は通常単体で用いるのではなくフッ化物として用いていますが、具体的にはフッ化ジアンミン銀やフッ化ナトリウムと言う形で作用させます。虫歯は汚れの中の細菌が作る酸により歯が溶かされ生じますが、フッ化物は歯が溶かされにくくなるような歯質強化と言う事と、もう一方で歯を溶かす細菌の酸産生能の低下にも作用していると言われています。この作用を日常の中で利用した一つの方法がフッ化物洗口です。

フッ化物洗口とはフッ化ナトリウム溶液を用いてブクブクうがいをする方法です。これは小中学校や保育園、幼稚園などで行われますが、家庭で行う方法もあります。この方法では一定濃度、一定量のフッ化ナトリウム溶液を用い30秒~1分間ブクブクうがいをします。

実際に学校など集団で行う場合、週5回法、週1回法があり年齢や回数により1回の使用量や溶液濃度を調整します。各家庭での場合は毎日1回行う方法があります。なお、フッ化物洗口を行うにあたっては、ブクブクうがいがうまく出来ないといけないのでうがいをして吐き出させる練習をしてから行います。

洗口を行うにあたり、まずしっかりと歯磨きをしましょう。口の中をきれいにしてから行います。フッ化物洗口後は30分間うがい、飲食は控えます。よって保育園ではお昼寝の前に、幼稚園・小中学校では授業の直前に実施し、家庭では就寝前の歯磨き後に実施するのが適切とされています。フッ化物洗口による虫歯予防効果ですが、約30~80%と言われています。第一大臼歯の萌出時期である就学前から第二大臼歯の萌出時期である中学生まで継続して実施していく事が予防効果を確かなものにして行きます。これによって得た効果は、一部のデータによれば成人になっても持続し、歯と歯の間に生じやすい虫歯や、歯の根っこの表面に生じる虫歯の予防にもつながるとされています。

ただ、一方でフッ素の過剰摂取による中毒の危険についての問題も指摘されています。どんなお薬もそうですが用量、用法を守り正しく使わないと意味がありません。

よってフッ化物洗口を日常の中に適正に取り入れ、歯の健康にとって有効なものとして上手に活用してみましょう。