皆さんはお口の中にも「がん」ができることをご存知ですか?発生頻度は少ないのですが、お口の中やその周辺にも「がん」は発生します。2012年の統計によると、50歳くらいから増加し、男性が女性より罹患率が高くなります。我が国における口腔がんの発生頻度は、がん全体の内2~3%といわれています。希ながんであるため啓発は進んでおらず、国民の認識の低さもあって患者数は増加傾向にあります。近年では、若年性の口腔がんも増加しています。
お口の中に出来るがんは「口腔がん」と総称され、舌・歯肉・口唇・頬粘膜・口蓋・口底など様々な部位に発生します。中でも舌に出来ることが多く、進行すると舌の切除をしなければならなかったり、あごや顔面に大きな傷跡が残ってしまったり、術後は、話す、食べるといった患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。一方で、体の表面に生じるがんであるため、肉眼での確認が可能であり、口腔がんに関する知識があれば、自分で病変に気づくことも出来ます。また、歯科医師により通常の歯科検診や診療中に発見される確率は高いものです。早期発見が出来れば、がん患者は術後の大きな障害を残すことなくQOLを維持したまま社会復帰が可能となります。
口腔がんは、たばこ・アルコール・刺激の強い食べ物・合わない入れ歯や放置したむし歯などによる粘膜の損傷など慢性的な刺激により発生しますが、他のがん等とは異なり、直接目で見ることができるにもかかわらず、初期にはほとんど無症状のため、気づいた時にはすでに進行がんになっていることが多くあります。初期に適切な治療が行われればほぼ治癒しますが、進行がんになるに従い治癒率は低下するため早期発見・早期治療がとても重要になります。口内炎が2週間以上治らなかったり、粘膜にただれやできものができたなど、気になる症状がある場合は、早めにかかりつけの歯科医院に相談しましょう。
近年では各地域の歯科医師会や行政の主催で「口腔がん検診」が毎年のように行われています。 千葉県でも年に一度は口腔がん検診を受けることが出来る地域が多数あります。ご自分のお住いの地域で口腔がん検診が実施されているかどうかは、インターネットを利用して歯科医師会や行政のHPを閲覧することで調べることが出来ます。是非「口腔がん検診」をご利用いただき、自身の健康チェックに活かしてください。