永久歯列を対象とした矯正歯科治療では、すべての歯を動かすために行う全体的な治療になることが一般的です。目標は上下の歯列を整えること、上下のかみ合わせを良くすること、歯槽骨(歯の並ぶあごの骨)の適切な位置に歯が並ぶように位置づけることです。このために上下顎の奥歯から前歯まですべての歯を動かし、歯列の位置や上下の歯の関係を適正にしていきます。皆さんも見かけたことがあるかもしれませんが、すべての歯の面に針金が通っている固定式の装置(マルチブラケット装置)を使用します。以前は金属の装置で目立っていましたが、透明な素材でできた目立たない装置も選べるようになっています。今はアメリカのTVドラマ、アグリーベティの主人公のようにはなりませんので安心してください。このマルチブラケット装置は取り外し可能な装置と異なり、かなり大きな量の歯の移動が行えます。また歯の頭の部分(歯冠)の移動だけでなく、歯の根までをしっかり移動できる仕組みになっています。ただ個人によって症状やあごの骨、筋肉、成長などの状況が異なるため、個々にあわせた治療計画を立て慎重に治療を進めていきます。このためマルチブラケット治療はきわめて専門性の高い治療と言われており、専門の学識と技術を持つことが必要とされます。日本矯正歯科学会などによる「認定医」や「専門医」などの制度が設けられているのは、専門の教育を受けた証として認識してもらうためです。技術的な特殊性だけでなく比較的長期間の通院が必要になるため、通院中の生活環境の変化や転勤の多い家庭では引越しなども想定しておく必要があります。公益法人 日本臨床矯正歯科医会(全国の矯正専門開業医の団体)のように、お引っ越し時の継続治療が全国でスムーズに行えるような団体もあります。また気になる治療費ですが、一部疾患における保険適用はありますが、ほとんどの場合は自費中心で、ケースバイケースです。通常は治療費や治療内容などの十分な説明やお話し合いが行われたうえで、治療を始めるか決められるので、歯並びやかみ合わせが気になる方は安心して相談してください。