虫歯など口の中のトラブルはいつなんどき生じるか分かりません。妊娠しているからと言って虫歯の痛み、歯肉の腫れなどが生じないとは限りません。もし周りの方がそのような事態になってしまったら、皆さんは何を考えるでしょうか?まず最初に考える事は、“この痛みを何とかしたい”、と言う事だと思いますが、次に考える事は“妊婦さんだから歯科治療は大丈夫?”と言う事ではないでしょうか。“レントゲンは?麻酔は?お薬は?”様々な疑問や不安が浮かんできます。
妊娠中の歯科治療は緊急性がなければ基本的には行わない方がいいと言われています。ただどうしても必要な時は、妊婦さんに対し歯科医師がしっかりと問診を行い今の体調や状況を確認し処置を行うこともあります。もちろん必要な場合は産科主治医とも連携を図り行っていきます。基本的に治療は安定期に行います。妊娠初期(15週くらい)や後期(28週以降)は胎児や母体への影響を考慮し、また様々なリスクを回避するために、可能な限りの応急的処置にとどめます。勿論この時期に、どうしても治療が必要な事もあるのでその時も産科主治医と十分な連携を取ります。
実際に歯科治療を受ける事になったら、レントゲン撮影や麻酔、抗生物質・鎮痛剤など様々な事が必要になってきます。レントゲン撮影においては、2011年の震災に伴う原発事故で色々な事が取りざたされてから“被曝”と言う問題が大きく取り上げられていますが、歯科で使用する物は皆さんが1年間に浴びる自然放射線量に比べて放射線被曝量はかなり小さいものです。よって必要な場合は診査・診断にはとても大切な情報になりうるので、レントゲン撮影を行う事もあります。次に麻酔ですが、緊急性などにもよりますが状況を考慮し使用して治療する事もあります。但し、麻酔薬にも種類がありますので状況に適したものを選択して用います。抗生物質や鎮痛剤ですが、これも必要性を十分に考慮して用います。例えば、歯肉が腫れた、歯肉から膿が出てきたなどこれらは細菌感染によるものですが、その様な状況に対しては抗生剤を用いる必要性が大きくなります。また当然痛みを伴っている事が多いので、鎮痛剤の処方も必要になると考えます。現在様々な薬が出でいる中で妊婦さんに処方して良いものといけないものがあります。当然、母体や胎児に安全なものを選択し処方します。勿論レントゲンや麻酔と同様に緊急性や必要性を加味した上で処方します。
以上、妊婦さんと歯科治療について述べてきましたが、上記したように実際の治療になるとレントゲン・麻酔・処方薬、これらの使用がどうしても必要になることがあります。もしも歯科治療が必要になってしまった場合は、歯科医師やかかりつけの産科医に相談し適切な処置を受けて下さい。もちろん、そうならないために日頃からブラッシングや定期健診を受け口腔ケアに心掛けましょう。