歯並びやかみ合わせは口や歯の健康だけでなく、全身の健康に対しても大きな影響を及ぼすことがテレビ等で取り上げられています。しかし一方では「八重歯ガール」が流行しているように、まだまだ歯列や咬合の大切さが周知されているとは言えません。今回から6回に渡り、歯列咬合や矯正歯科治療に関する話をしたいと思います。

きれいな歯並びや正しいかみ合わせは、口や歯の健康を保ちやすくすると言われています。厚生労働省と日本歯科医師会が推進している8020運動をご存知だと思いますが、この「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という目標を達成されている80歳以上の人を対象に、歯並びやかみ合わせを調べた研究があります。その結果として、前歯が逆にかんでいる人(反対咬合・はんたいこうごう)や上下の歯がかみ合わずに隙間がある人(開咬・かいこう)は全く見られず、正常咬合者が多く、歯列には重度な叢生(そうせい・隣の歯との間に隙間がある歯並び)は見られないことが報告されました。きれいな歯並びは、食物の残留が少なく歯磨き等の清掃効率もよく、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。さらに正常なかみ合わせでは、ほとんどの歯が均等に機能するので、かむ力が歯のために良い刺激となります。八重歯のご老人をまだ見たことがないのですが、やはり使われない位置にある歯を健康に保つことは難しいと考えられています。また、全身の健康的にも咀嚼(そしゃく)の色々な効果が注目されています。消化器官としての役目、脳への刺激や顎の骨の成長促進等、よくかめるようになれば全身への良い影響も大きくなるでしょう。

逆に一部の歯だけで咬む力を負担すると、歯茎が下がる・歯の根が短くなる等、歯や支えている骨のダメージにつながることがあります。また顎の骨から極端に飛び出している傾斜の強い歯並び(前突・ぜんとつ)や下の前歯が見えないほど深過ぎる咬み合わせも、力の負担に適さないため、かむ力やあごの運動が大きな負荷になってしまう可能性があります。