最近の子供は食生活の変化で咀嚼(そしゃく)の回数が減り、あごの成長不足から歯列咬合の不正が多いと言われています。あごの骨(顎骨)成長は遺伝的な要素にも左右されているので個人差はありますが、よくかむことが歯並びや顎骨の成長に良い影響を与えることは事実です。全身の成長で言われているように適度な運動は体の成長に大切で、骨格を成長させるとともに骨や関節などの構造も丈夫にします。顎骨の成長も同様に咀嚼というあごの運動を多く行うことで促進され、歯の生えるスペースの増大や上下のあごの成長バランスを良好にする味方となります。

咀嚼の基礎は、まだ乳歯の生えてこない授乳期から始まっていると考えられています。

乳児は歯の生えていないあごでモグモグしながら乳首をつぶして、乳を押し出して飲みます。この動きは咀嚼を覚えるはじめの一歩です。やがて乳歯が生え出し離乳食そして固形の食事と移り変わり、咀嚼回数や力量が大きくなっていきます。咀嚼は下あごを動かす筋肉によって行われていますので、筋肉自体の発育も重要です。早過ぎる離乳食や筋肉の発育に伴わない硬い食物の摂取は、逆にかまないで飲み込む習慣や好き嫌いを作ってしまうので気をつけましょう。

現代の食事は加工食品が多く、「やわらかい食感」がおいしい評価として成り立っています。このような食事が中心では必然的にかむ回数や、かむ力が減少します。かむ筋肉も体の筋肉と同じで、鍛えなければ衰えてしまいます。毎日の食事や、おやつはいわばトレーニングみたいなものです。繊維性の豊富な食材を、かみごたえのある調理方法で作る食事も意識してみてはいかがでしょうか。

ただ、すでにあまりかめないお子さんの場合は、突然かみごたえのある食事に変えても、かまずにそのまま飲み込む癖がついたり、口から出してしまいます。離乳食から固形食のステップに戻るように、徐々にかむ回数の多い食品を取り入れるなどして、あせらず期間をかけていく心構えが必要です。