これまで歯列咬合(歯並びやかみ合わせ)の不正の原因や予防についてお話してきました。しかし実際に歯列咬合の不正が起きてしまった場合、これを治すためには矯正歯科治療が必要になります。矯正歯科治療の対象として良く見られる症状は、ガタガタの歯並び、八重歯など歯列の問題です。また上の前歯が出ている上顎前突、前歯が逆に咬んでいる反対咬合、前歯がかまない開咬など、かみ合わせの問題も多く見られます。ほとんどの場合は多かれ少なかれ両方の問題を抱えています。これらに対し歯を削って冠を被せることなく、自分の歯のままで並べ替えていく治療が矯正歯科治療です。

矯正歯科治療の大きな目的は、①歯並びを整える。②すべての歯がかみ合うように上下の歯の位置関係を改善する。③歯槽骨(歯の並ぶ馬蹄形のあごの骨)に対してはみ出したり、傾斜が強くならないように歯列を適切に位置づける、などがあります。

しかし上下のあごの大きさやバランス、歯槽骨の厚さや形、口の周りの筋肉のバランス、成長期における変化など、個人によって状況は異なり、個々にあわせた治療計画を立て慎重に目標達成を図らなくてはなりません。このため矯正歯科治療はきわめて専門性の高い治療と言われており、矯正歯科医は専門の学識と技術を持つことが要求されています。

矯正歯科治療の装置は年齢、歯列咬合の不正状況や治す部位など、それぞれ適応する装置が異なりますので、詳しくは矯正歯科医に診てもらい説明を受けると良いと思います。

一般的には低年齢では取り外し式の装置や比較的シンプルな構造の固定式装置を使用し、永久歯列が完成する小学校高学年以降では、全ての歯の表面に針金を着ける装置が主流となります。たまに見かけられると思いますが、現在は子供だけでなく大人の方も多くなりました。全身の健康の源である口の健康の意識が高まると共に、矯正歯科装置に対する抵抗感も少なくなってきているようです。