日頃の診療の中で、「子どもの指しゃぶりはどうしたらやめられますか」と保護者から質問されます。
実は、子どもの指しゃぶりはお母さんのおなかの中にいるときから始まっています。胎児期の14週〜15週ごろから口に手を持っていき、その後、指を吸う動きが見られるようになります。これは産まれて母乳を飲むための練習のような役割を果たしていると言われています。
生後間もない数カ月のときは、口元に来た物を吸って、その物の性状や形態、味などを認識し学習していると考えられています。乳児における指しゃぶりは発達過程の生理的な行為なのです。1~2歳になると、遊びなど行動の幅が増え、徐々に指しゃぶりが減少すると言われていますが、眠いときや退屈なときは指しゃぶりが残ります。
3歳〜就学前は、保育園や幼稚園などに行くようになり、子ども同士の遊びで手遊びや外遊びの時間が増加し、さらにできることの幅が広がることから指しゃぶりをする時間が無くなり、頻度も減少傾向になります。5歳以降、小学校入学の時期になると、ほとんどが消失すると言われていますが、まだ残るようであれば噛み合わせや歯並びへの影響が懸念されますので、注意が必要です。
懸念される問題点の1つに「開咬」と言われる症状があります。これは、奥歯は咬かんでいるけれども前歯は隙間があいて、上手く咬めない状態のことです。次に「上顎前突」と言われる症状です。これは、よく言われる出っ歯のことです。3つ目に「反対咬合」と言われる症状があり、いわゆる受け口のことです。さらに「交叉咬合」と言われる症状があり、これは奥歯の上下の噛み合わせに異常が生じてしまう状態です。また、発音や嚥下をする際に、舌を前方に突き出す動きが生じてしまい、口唇閉鎖ができなくなり口呼吸が見られたり、発音などにも影響が出てしまったりすることがあります。
指しゃぶりは、吸い方や頻度にもよりますが、3歳ぐらいまでは無理に禁止せず様子を見てあげましょう(もちろん、状況によっては早い段階で専門医に相談した方が良い場合もあります)。そこから頻度が減少し、指しゃぶりが消失すれば、歯並びや口腔機能に影響が見られないことが多いと言われています。
指しゃぶりの他にも、癖と言われるものはさまざまあり、貧乏ゆすりやお漏らしなどもそれに含まれます。その背景には、緊張、不安、欲求不満などのストレスがあると考えられることが多く、保護者としてはとても心配になると思います。ただ、これらは子どもが成長する中での一時的あるいは一過性の生理的なものとして考えてあげた方が良いこともあります。
無理に止めさせたり、気にし過ぎたりすると、かえってその癖を助長してしまうこともありますので注意が必要です。それでも保護者として心配は尽きないと思いますので、分からないことや不安なことは歯科医師に相談し、一緒に解決策を探してみましょう。





